新潟大学に養護教諭特別別科という1年制の課程がある。「保健室の先生」の養成を目的に1980年に設置された。入学には看護師免許を持つか、取得見込みがあることが要件で、同様の課程がある大学は全国で数校に限られる

▼学生の中には看護師の仕事を辞めて入った人も多い。群馬県高崎市出身の阪上琴音さん(29)もその一人。6年間勤めた地元の病院を昨夏に退職し、同じ道を先に行く先輩に勧められ受験した

▼勤めた病院では末期がん患者も看護し、痛みや不安に寄り添う大切さを痛感した。自身は高校時代に「学校の圧迫感」に苦しみ、卒業を前に休みがちになった経験がある

▼心身の不調から子どもたちの不登校は年々増えている。いじめも深刻だ。全国で毎年500人を超える小中高生が自ら命を絶っている。こうしたニュースを見て、看護師経験を生かして養護教諭になろうと決意した

▼別科の選択科目に、新聞を活用するNIE講座がある。これまで阪上さんは新聞を読むことはあまりなかったが、語彙(ごい)力や表現力が高まると思って受講を決めた。講義では記事をスクラップし要約や感想を書く。学校で保健便りを書くためのポイントなども学ぶ

▼大型連休が終わり、学校生活に違和感を抱くようになった子どもはいないだろうか。阪上さんは「自分からSOSを発信できない子もいるはず」と自身の経験を重ねる。声にならない悩みを聞き出し、温かいメッセージを伝える。そんな保健室の先生がさらに増えるといい。

朗読日報抄とは?