スーパーに並ぶ野菜の苦みやえぐみは昔に比べると、ずいぶん和らいだような気がする。野菜嫌いの人でも食べやすいように、農家らが改良を重ねた結果だろう

▼苦みを感じる仕組みに着目した研究についての記事を先日の紙面で読んだ。舌には苦み成分を取り込む「受容体」が25種類ある。食品メーカーのキユーピーはピーマンの苦みを認識する受容体を特定した。さらに、苦み成分に卵黄を加えると、認識する苦みが減ることも判明した

▼ピーマン嫌いが卵で解決できるかもしれないという。食べものの好き嫌いの改善につながるのなら喜ばしい。一方で「良薬は口に苦し」とも言う。苦いものから目をそむけたり、遠ざけたりしてばかりでは己のためにならない

▼派閥の政治資金パーティー裏金事件で苦境に立つ自民党だが、事件を受けた政治改革には後ろ向きの姿勢が目立っていた。公明党との間で政治資金規正法改正の与党案に大筋合意したが、自分たちにとって苦いものを口にしたくない様子がありありと伝わってきた

▼パーティー券購入者の公開基準額は具体的な額を決めず、政策活動費の使途公表についても曖昧な部分が残る。詳細な使途を見えにくくしようとの思惑がにじむ。野党からは「抜け道だらけ」との声が上がり、法改正は一筋縄ではいきそうにない

▼政治改革の取り組みは、食べものの好き嫌いとは次元が異なる。苦みを減らすことばかり考えているようでは、この先は今よりもっと苦いものを味わう羽目になる。

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