本県はじめ地方の多くは人口減少が進み、活気を失いつつある。だからこそ、選挙を通して地方の実情をきちんと国政に反映させる仕組みを考えていかなければならない。

 衆院選挙区画定審議会(区割り審)が、小選挙区の新たな区割り案の作成に着手した。6月25日までに改定案を首相に勧告する予定だ。

 小選挙区定数を「10増10減」する今回の改定は、人口比を反映しやすい「アダムズ方式」によるものだ。新潟、宮城、福島、岡山、広島、山口など合わせて10県の定数が各1減となる。

 本県は現在6ある小選挙区が5に減る見通しだ。つまり地元選出の衆院議員が6人から5人に減ることになる。

 一方、東京都は5増、神奈川県は2増、埼玉県、千葉県、愛知県は各1増となる。

 地域をよく知り、国の政策を作る衆院議員の削減は、地方にとって見過ごせない問題だ。

 10増10減を巡り各都道府県が区割り審に提出した意見書では「地方の実情が国政に反映されなくなる」(広島)「国の政策が都会偏重になる」(岩手)との懸念が相次いだ。

 本県も「地方の声が届きにくくなる」と訴えた。

 共通してにじむのは、地方側の強い危機感だ。

 今回の区割り見直しは、有権者の多い選挙区と少ない選挙区とで生じる「1票の格差」を是正し、憲法が要請する「投票価値の平等」を図る目的がある。

 求められるのは、地域の声をしっかりと国政に反映させるための制度の見直しだ。

 山形県知事は記者会見で「人口の多寡にかかわらず、地方の声を確実に国政に反映させる仕組みが重要」と指摘。本県は先の意見書で人口のみが基準の現行制度を見直すよう要望した。

 地方の人口減少は今後も続くと予想されている。1票の格差の是正はもちろん大切だが、それだけにこだわれば都会の議員が増え続けるいびつな状態になってしまう。

 国会は都市と地方の格差拡大を助長させず、地方の声が国に届く選挙制度について議論を重ねてほしい。

 区割り案作成に当たって区割り審は、可能な限り市区町村を分割しない方針を決めた。

 「平成の合併」が全国で最も進んだ本県は、新潟市が四つ、長岡市が三つの選挙区に分かれる。新潟市ではさらに同一行政区で分割されている所がある。

 こうした状態は住民を混乱させ、選挙事務を煩雑にさせてきた。必ず解消し、よりよいものにしていかなければならない。

 選挙区の数が減れば、議員一人一人が有権者の声をすくい上げ、国政に届ける努力がこれまで以上に求められる。

 1996年に導入された現行の小選挙区比例代表並立制を巡っては、大敗しても復活当選できるなど制度のひずみや課題も見えている。

 どうしたら地方の声や民意がしっかり国政に届くのか。私たち有権者も関心を持ちたい。