スタートからもうすぐ2カ月のNHK連続テレビ小説「虎に翼」が好評らしい。以前も紹介したが、日本初の女性弁護士で新潟家庭裁判所の所長も務めた三淵嘉子さんがモデルだ

▼「はて?」。主人公の口癖である。今年の流行語だと交流サイト(SNS)でも話題だ。戦前、妻は法的に「無能力者」とされた。女性が口答えすれば「生意気」。納得できない。モヤモヤが募る。その度、主人公は「はて?」と自問する

▼妊娠中に過労で倒れた時だ。「君、仕事なんかしている場合じゃないだろ」。恩師の言葉は優しい。だがその裏に、女性は子を産むことを優先すべきという決めつけはないか。この場面の「はて?」も絶妙だ

▼「この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」。上川陽子外相が静岡県知事選の応援演説で言った。すぐに撤回したものの、モヤモヤが残る人もいるだろう。女性パワーで知事を誕生させようとの趣旨だったというが「女性」と「うむ」が結びつけば出産を想起する人も多いはずだ

▼女性の価値はひとえに出産にあるかのような意識が垣間見え、引っかかる人がいるのも無理はない。発言を違和感なく受け入れる声があるのも何だかモヤモヤする

▼ジャーナリストの堤未果さんは近著で社会へのモヤモヤ感を「違和感」と表現し、危険察知のアラームだと説く。「はて?」も、戦前の女性が抱いた違和感そのものだ。政治、職場、家庭…。ふと見回せば、現代の日常ですら「はて?」のなんと多いことか。

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