広島県尾道市の石井哲代さんは先月で104歳になった。百寿を過ぎても1人暮らしを続けてきた。「長う生きてきた集大成が今の自分です」。老いを受け止めながら、日々を楽しむ
▼その暮らしぶりを地元の中国新聞が取材している。昨年までの連載をまとめて出版した「103歳、名言だらけ。」の中で、石井さんは独居のコツについて語っている。1人きりで過ごしていると寂しい気持ちになることもあるが、そんな時は「特別な楽しみを加えるんでございます」
▼例えば若い頃の趣味だった写真を収めたアルバムをめくる。小学校の先生をしていた頃から親しんできたドリルの問題を解く。あるいは、甘いものを食べる。先々を思い、弱気の虫が頭をもたげたら、大きな声を出したり、独り言をつぶやいたりして自らを鼓舞する
▼独居しているが、孤立してはいない。周囲との交流も元気の秘けつのようだ。誰の命にも限りはあるが「残り時間を見つめると、なんかこう周りの景色が輝いて見えるんですね」と話す言葉は前向きだ
▼先日の本紙は、独居状態で亡くなる高齢者が推計で年間約6万8千人に上ると報じていた。孤立死の増加が社会問題になって久しい。一方で、本人が望んだような形であれば1人で迎える最期も決して悪いことではない
▼高齢者の1人暮らしには何かと困難がつきまとうのは確かだ。けれど、知人や公的サービスなど周囲とのつながりがあれば、できることも少なくない。104歳の先達が教えてくれる。