本県にゆかりがある力士の快挙を喜びたい。デビューからわずか1年、23歳の若さで成し遂げた偉業だ。さらなる高みに向けた奮闘を期待する。

 大相撲夏場所千秋楽で、石川県津幡町出身で二所ノ関部屋の新小結大の里が、関脇阿炎を破り、12勝3敗で初優勝した。

 大の里は糸魚川市の能生中、海洋高で鍛錬を積んだ。海洋高出身力士の幕内優勝も初めてとなる。

 記録ずくめの優勝だ。初土俵から所要7場所での制覇は、幕下付け出しで輪島の15場所を上回り、付け出しを除いても先場所の尊富士の10場所を更新し、最速だ。67年ぶりの新三役優勝も遂げた。

 スピード出世のあまり先場所まで髪はざんばらで、初めてまげを結って臨んだのが本場所だった。

 192センチ、181キロの巨体で、胸から当たる立ち合いは迫力十分だった。馬力を生かした攻撃的な取り口で、横綱照ノ富士を含む1横綱、2大関を撃破した。

 優勝から一夜明けた27日の会見では「さらに上へ、上へと駆け上がりたい」と精進を誓った。

 日本相撲協会の八角理事長は「大関、横綱を目指してもらわないと困る」と語っている。

 大の里の活躍は「第二の故郷」の本県にも勇気を与えた。

 小学生時代に「何かを犠牲にしないと強くなれない」と石川県を離れ、中高時代は糸魚川市で相撲漬けの生活を送った。本人が語るように「365日、相撲に集中できる環境」が底力を培った。

 海洋高の相撲部総監督によると、大の里は一日60~70番の申し合いをこなし、稽古後は夜道を数キロ走って寮へ帰った。

 日体大時代は教育実習で行司役を務め、相撲の楽しさを伝えた。

 能登半島地震に胸を痛め、被災地を慰問した。今回の快挙に励まされた被災者は多いに違いない。

 「気は優しくて力持ち」を体現するような人柄の大の里の今後を、温かく見守っていきたい。

 将来の角界を背負う逸材だけに、相撲以外の面でも自らを律していかねばならない。昨年9月に20歳未満の幕下以下力士と飲酒したとして相撲協会から今年4月に厳重注意処分を受けたからだ。

 大の里や先場所の尊富士ら若手が台頭してきた。一方、本場所は横綱や三役のけがや体調不良による休場が相次いだのは残念だ。

 大の里らはけがをしない体をつくって角界を盛り上げてほしい。