日本車の信頼を揺るがす重大な事態だ。トヨタ自動車はじめ各社は、日本の製造業の代表格としての責任を胸に刻み、不正の根絶と再発の防止に全力を挙げなければならない。

 トヨタ自動車など5社が、車の大量生産に必要な「型式指定」の認証申請に関し不正があったことを明らかにした。

 不正があったのはトヨタのほかマツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの計38車種に上る。台数は重複を除き計500万台超だ。

 うち32車種は生産を終了しており、国土交通省は3社が生産中の6車種について、出荷停止を指示した。4日はトヨタ本社に立ち入り検査を行った。今後、他の4社も検査し、再発防止を求める是正命令などの行政処分を検討する。

 認証はメーカーが車の安全性を自ら検査する仕組みで、国交省に提出したデータが基準を満たしていれば型式指定を受け、大量生産ができるようになる。

 具体的な不正の内容は虚偽データの提出や試験車両の不正加工、エンジン制御ソフトの書き換え、試験成績書の虚偽記載などだ。

 認証申請を巡っては2022年以降、トヨタグループの日野自動車や豊田自動織機、ダイハツ工業で相次いで不正が発覚している。

 今回新たにトヨタ本体を含む計5社で判明したことは、認証不正が業界で幅広く行われていることを疑わせる。

 5社はいずれも安全性に問題はないとしているが、仮にそうだとしても「安心感」が損なわれたことは間違いない。

 世界で高い評価を受ける日本の自動車産業の信頼に傷を付けるもので、極めて残念な事態だ。

 なぜ不正が行われたのか。ルールより効率を優先するようなことはなかったか。短期間での新車開発のしわ寄せが不正につながったダイハツのような問題はなかったか。各社は多角的に検証し、再発防止に努めなければならない。

 とりわけグループ企業で不正が相次いだ業界トップのトヨタには徹底的な対策が求められる。

 豊田章男会長は記者会見で「認証制度の根幹を揺るがすもので、自動車メーカーとして絶対にやってはいけないことだ」と述べた。会長がリーダシップを取って対策に当たってもらいたい。

 今回の不正には、より厳しい海外基準の試験データを流用したケースがあった。時代遅れの規定が残っていたり、メーカー側に解釈を委ねる不透明な基準があったりすると指摘する関係者もいる。

 今ある国のルールをメーカーが守るのは当然だが、ルール自体に問題があるなら、見直しを検討する必要もあろう。

 出荷停止により、関連する企業や日本経済への影響が懸念される。国は十分に目を配り、支援策を考えてもらいたい。