買い物がこれほど便利に済ませられるようになるとは、半世紀前まで誰も思わなかっただろう。「開いてて良かった」はもはや当たり前。国内の本格的なコンビニエンスストアの登場から50年になった

▼慌ただしく腹に詰め込んだおにぎりも、わびしい深夜に飲み干した缶ビールも、欲しい時に買えた。トイレに助けられたことも数知れない。業界団体によると、全国の店舗数は大手7社で5万5千を超える

▼大手チェーンが県内に初出店したのは1979年、新潟市東堀前通のサンチェーン(現ローソン)だった。各社の店舗網は広がり、県内には2月末現在で873店舗がある

▼10年ほど前になるだろうか。中越地域の農村部に新規の出店があった。近辺では大ニュースだ。歩いて行ける商店がとっくに姿を消していた地域に風を吹かせた。程なく、少し離れた農協のAコープも、別のコンビニの提携店に衣替えした。ちょっぴり町場風の雰囲気が漂った

▼だが、長くは続かなかった。相次いで撤退した。市場戦略はシビアだ。つかの間、利便性を享受した土地の人々には、がっかり感を増幅した不便さが押し寄せた。場所によっては、そんな現実もあった

▼コンビニは便利な機能を次々と拡張させてきた。暮らしに欠かせないインフラとして存在感を高めた。人口減少と高齢化で社会が縮みゆく中、これから必要とされる地域のお店とは。コンビニは今後どんな変化を遂げていくのか。期待を持って利用したい。もちろん、地場の商店も。

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