ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、それに乗じた挑発のように見える。停戦、和平を切望する国際社会を愚弄(ぐろう)する行為と言って差し支えあるまい。
日本にとっても大きな脅威であり、決して許すことのできない暴挙だ。東アジアの安全確保に向け、日米韓が緊密に結束して対応してもらいたい。
北朝鮮は24日、日本海に向け新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した。
北海道・渡島半島の西約150キロにある日本海の排他的経済水域(EEZ)内に落下し、落下地点はこれまでのミサイル発射で最も日本列島に接近した可能性があるという。
弾道ミサイル発射は国連安全保障理事会決議違反だ。日本のEEZ内への落下は国内の船舶や航空機などを危険にさらす。
日本政府は北京の大使館ルートを通して北朝鮮に抗議し、岸田文雄首相は「断固として非難する」と表明した。極めて当然の反応だ。
北朝鮮は今年2月と3月、2020年10月の軍事パレードで公開した新型ICBMを飛距離や高度を抑えて発射していたことが日米韓の分析で判明。北朝鮮は偵察衛星開発計画に基づく発射だと主張していた。
今月16日にも新型ICBMの可能性がある弾道ミサイルを発射したが、韓国軍は直後に空中爆発し失敗したとみている。
今回は高い角度で打ち上げるロフテッド軌道で発射したとみられ、最高高度約6200キロで過去最長の71分間にわたって飛行した。見逃せないのはその射程の長さだ。
北朝鮮が17年11月に同じロフテッド軌道で発射したICBM「火星15」(射程1万キロ以上)の高度4千キロ超を大幅に超えており、米全土を射程に収める可能性がある。
金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は18年4月に核実験やICBM発射の中止を決めたが、19年2月の米朝首脳再会談決裂を経て今年1月、中断した「全ての活動」の再開検討を指示した。
北朝鮮はICBMの開発推進で米国に対する核抑止力を増強して対決姿勢を示し、核保有国としての体制維持を図る構えを鮮明にしたといえる。
北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻で国連安保理が機能せず、韓国で政権交代を前にした現在のタイミングを好機と捉えているとの見方もある。
日米韓は付け入る隙を与えてはならない。
岸田首相は北朝鮮への制裁などについて米韓両国など関係国と連携して対応していく方針を表明し、ベルギー・ブリュッセルで24日に開かれる先進7カ国(G7)首脳会合でも連携を確認したいとした。
足元を固めてほしい。
ウクライナへの侵攻を続けるロシアの非道な振る舞いを許せば、北朝鮮の態度がさらに増長する懸念もある。
G7会合では日本を含む参加各国が結束を強め、ロシアに毅然(きぜん)と対峙(たいじ)していく姿勢を世界に示してほしい。
