先日鉢に植えたバジルの背丈が伸びてきた。丈夫で育てやすいので、少しぐらい無精をしても多くの収穫が期待できる。葉を料理に添えたり、ソースにしたり。大きく育つのが楽しみだ

▼特にトマトを使った料理に合うとされるが、相性がいいのは皿の上だけではない。トマトと一緒に植えると害虫の予防になるという。互いに共存共栄する「コンパニオンプランツ」として知られる

▼わが国との関わりは意外と古く、江戸時代の儒学者で薬学者の貝原益軒が著した「大和本草」に登場するそうだ。代表的なスイートバジルの和名は「メボウキ」で、黒い種子を水に浸すとぷるぷるとしたゼリー状になるため、目の汚れを取る薬として使われたらしい

▼原産地はインドをはじめとした熱帯アジア。インドでは神にささげる聖なる植物として大切にされ、これを育てて祭る者は罪が軽減され、天国への道が開かれると考えられた(ジャパンハーブソサエティー「ハーブのすべてがわかる事典」)

▼そんなインドでは先ごろ総選挙があった。モディ首相が率いる与党インド人民党(BJP)とその連合が過半数を維持したが、BJPは単独過半数を逃し、政治が不安定化するとの見方もある

▼スイートバジルの香りは甘い一方、どこかスパイシーでもある。インドは「世界最大の民主主義国家」とされるが、独自の外交方針を取る。今後も、国際社会の中で存在感を高めていくのは間違いない。コンパニオンプランツのような関係を築いていければ。

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