新潟など北陸の梅雨入りは昨年が6月9日ごろで、平年も11日ごろだからもう過ぎてしまった。庭のアジサイはつぼみの玉を日々膨らませ梅雨入り宣言を待っているが、その気配もない
▼晴れ間続きの街角は、雨傘ではなく日傘が目立つ。天候不順を招くエルニーニョ現象が終息したと気象庁が発表した。今度は猛暑につながるラニーニャ現象が起きる確率が6割という。昨年も空前の酷暑で、記録的な暖冬少雪だった
▼田畑の水不足はすでに深刻だ。この上、熱波の襲来を思うと気がめいる。災害級の豪雨は困るが、シトシト雨が恋しくなる人も多いだろう。動画サイトではさざ波やせせらぎと並び、雨も癒やしの映像として人気だ
▼窓辺の滴や森林を包む霧雨…。テレビやスマホから自然の映像と音が流れ続ける。雨の音には、適度なゆらぎとリズムがあるという。それが疲れた心をリラックスさせるようだ
▼本紙読者文芸選者で歌人の馬場あき子さんは、随筆「雨の音」で雨を楽しい交響楽に例えた。ひさしや竹林、柔らかい土や池に降る音、傘やかっぱを打つ響きなど、雨声は多彩だ。だが高層ビルのレストランで、音もなく窓をぬらす光景を見てつぶやく。「にぎやかな雨の時代は、もう終わってしまった」
▼この夏も熱中症多発が心配だ。エアコン頼みの消夏法はいまや当然。窓を閉め、屋外の熱気を防ぐ。家が密室のシェルターになってしまった。風鈴や虫の鳴き声、本物の雨音すら満足に聞けない。そんな温暖化の時代である。