雪に閉ざされる北国の冬、農家の代表的な仕事の一つに、ザルなどの竹細工があった。この季節の風物詩でもあり、本紙をさかのぼると何本も記事が出てくる

▼ある作り手は竹のザルの特長について、水切れがよく、においがつきにくいことだと語った。この人の場合、なたを使って竹を幅5ミリほどに割き、長細い材にする。直径60センチのザルを作るには、この材が150本ほどいるという

▼別の作り手は「竹は呼吸し、生きている。梅干し作りや野菜の保存に最適なんだ」と言った。金属やプラスチック製が主流になり作り手は激減したが、近頃は独特の風合いや機能が見直されている。熱々のおにぎりをのせれば適度に水分を逃してくれるからべとつかない

▼そんな優れものにとっては、不本意かもしれない。ザルの目から水が漏れるように、抜け落ちるものの多い例えとしても使われる。抜け道の多い「ザル法」とも指摘される改正政治資金規正法がきのう成立した

▼政策活動費は10年後に領収書を公開すると付則に記したが、法案を提出した自民党の担当者は「(公開が)なじまないものも考え得る」と答弁した。公開されても黒塗りばかりという事態も考えられる

▼「いわゆる連座制」については、会計責任者が虚偽の説明をしていたなどと言い張れば処罰されない可能性がある。むしろ立件のハードルが上がったとの声さえある。この法改正が国民の目にどう映るか。与党に求められる想像力も、ザルの目から抜け落ちてしまったか。

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