読書に費やす時間が大幅に減っているという。シチズン時計が20~50代の働く男女400人に電子書籍を含む1週間の読書時間を尋ねると「読まない」との回答が48%と、半数近くにも上った。50年前は8%、25年前は10%だったので活字離れが急速に進んでいる

▼そんな折、こんな言葉を耳にした。「小説などを書いている人は増えているのでは」。新潟市で先日開催された同人誌即売会「新潟コミティア」に参加した、神奈川県在住のYoh(よう)クモハさんが語っていた。阿賀北地域を舞台に小説を創作した「阿賀北ノベルジャム」でグランプリ受賞歴がある書き手だ

▼新潟コミティアは対象をオリジナル作品に限定し、1991年に始まった。今回で58回目となった。漫画やイラストなどを含め、県内外から百余りのサークルが参加した。同種のイベントは各地で開かれている

▼クモハさんによると、東京では出展者が多過ぎて抽選になるほどだとか。新潟を含め、どこも盛況だ。クモハさんは三条市出身で、趣味で執筆を続けている。新潟コミティアには村上高の生徒を主人公にした新作も持ち込んだ

▼「表現することは体にいいんですよ」と、書く作業が楽しそうだ。普段四苦八苦して、このコラムを書いている身としては素直にうなずけなかったが、その表情は輝いていた

▼街から書店が消える。そんなニュースも目にする。クモハさん同様、多くの出展者が創作に情熱を注いでいた。彼らの魂が活字離れに歯止めをかけてくれないか。

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