この季節、空模様が怪しい日は、かばんにしのばせる。パラパラッと落ちてきたら、さっと取り出してシュパッ。突然の雨の際、折り畳み傘は強い味方になる

▼折り曲げられて小さくまとまった骨組みをするりと開くと、きれいなドーム状の傘が現れる。なかなか複雑な構造だから、手先が器用な日本人が発明したのかと思ったら、特許を取得したのはドイツ人だという。1928年というから100年ほど前だ

▼戦後は日本でもよく作られるようになった。防水性が高く、安価なナイロン生地が登場して普及が進んだようだ。ただ、ご多分に漏れず、近年は輸入品が多い。大阪税関によると、昨年の輸入額は前年比59・6%増の158億円で、比較可能な1988年以降で最高を記録した

▼量にすると2240万本にも上る。9割を中国産が占め、カンボジア産が続く。近年はおおむね2千万本程度で推移するというが、高性能化や原材料高で単価が上昇したことで、輸入額を押し上げた面もあるようだ

▼以前に比べると軽量化が進み、風にも強くなったように感じる。日傘としての機能を備えたものもある。猛暑の夏が増え、傘で日差しを遮る「日傘男子」なる言葉も聞くようになった。持ち歩きやすい傘が手放せないシーズンがやって来た

▼お湿り程度にとどまらず、災害を引き起こすような大雨も増える時季だ。備えあれば憂いなし。降っていなくても、折り畳み傘をかばんの中に。そして心の中には、防災の気構えを常に携帯したい。

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