新型ウイルス禍を経て変わった習慣の一つに夜の会食、飲み会が減ったことがある。社外の人とは復活しつつあるが、会社の同僚との「帰りに一杯」は減ったままだ

▼うれしいにつけ悲しいにつけ、誘い誘われしたものだが、面倒が先に立つようになってしまった。年のせいもあるだろう。すぐ酔っ払い、聞いた話を翌朝には忘れていることもある

▼岸田文雄首相が自民党の麻生太郎副総裁と会食したと報じられた。政治資金規正法改正を巡って生じた溝を埋めようと首相側が呼びかけた先週に続き、おとといもあった。2週続けて懇親を深めたことで、懸案の関係修復はなされたのだろうか

▼意思疎通、情報収集、人心掌握…。政治家にとって酒席は重要だ。故田中角栄元首相らが活躍した昭和の時代は、夜の料亭で大事なことを決める「料亭政治」が盛んだった。だから政治家は酒飲みだと思いがちだが、実は最近はそうでもない

▼首相経験者を見ると、菅義偉氏は下戸を公言し、パンケーキなど甘いもの好きで有名だ。安倍晋三氏もあまり飲めなかった。海外の政治家では米国のバイデン氏、トランプ氏は共に厳格な禁酒主義者だ。ロシアのプーチン氏は飲めるが控えているといわれる

▼一方、岸田首相は政界きっての酒豪で知られる。酒席はさぞ得意なことだろう。9月の党総裁選を前に、岸田首相に退陣を求める声が党内から公然と上がり始めた。首相が自任するもう一つの特技は「聞く力」。果たして批判の声をどう聞くだろうか。

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