本県のカレー好きは全国トップ級-。家計調査結果からよく言われる。でも学校給食で食べるカレーシチューは、本県どころか全国で大人気のメニューだろう
▼揚げパンやクジラの竜田(たつた)揚げが楽しみだった中高年世代の多くは、具の少ないカレーのシャバシャバした感じ、独特の甘い香りを覚えているはずだ。仲間と囲んだ給食を思い出すと、少し幸せな気分になる
▼「給食というものは多くの人にとって、もっとも『楽しく食べた』経験でしょう」。ノンフィクション作家の山下柚実(ゆみ)さんは著書「給食の味はなぜ懐かしいのか?」で、その心地いい記憶が味覚などの形成に与える影響に触れている
▼給食は食育の大舞台だ。食育基本法は食育を知育、徳育、体育の基礎と位置づける。だが国の実態調査を見て心配になった。公立小中で給食を完全無償化した自治体は増えてはいるが、昨年9月時点で全体の3割にとどまる
▼学校給食費は月5千円前後。困窮世帯には大きな負担だ。憲法26条は義務教育の無償を定める。食育も教育の一環だ。新潟市出身の福嶋尚子(しょうこ)・千葉工業大准教授(教育行政学)は本紙で、給食無償化は子育て支援というより「憲法の理念、子どもの生存権として保障されるべきもの」と強調していた
▼本県では4市町村が完全無償化している。憲法を思えば自治体財政に左右されず、国が率先して取り組むべきだろう。お金の心配をせず、具だくさんのカレーをお代わりできる。そんな楽しい思い出をつくらせてほしい。