雨がシトシト、ザーザーと降る季節だ。とうとうと流れていた川はゴーゴーと音を上げる。大雨になれば警戒の水準を一段上げなければ。濁流の水音はドードーと聞こえるかもしれない

▼妙高市の関川と矢代川に挟まれた地域には、そんな地名がある。上百々と書いて「かみどうどう」と読む。川の流れが急で水の音が高いことから名付けられたそうだ。今は関川も矢代川も集落から離れた場所を流れるが、暴れ川はかつて集落近くを流れていたのだろうか

▼関川上流には、似た響きの集落もある。妙高市の蔵々の読みは「ぞうぞう」だ。国内屈指の急流である関川が半島のように突き出した台地にぶつかり、左へ大きく蛇行する地にある。水害の常襲地だった

▼この地で生まれ育ち、95歳になった小島博さんに地名の由来を聞くと、10軒ほどあった各家に蔵があったからという説があるという。とはいえ正確なことは分からない

▼集落の起源は上杉謙信に仕えた武将の鬼小島弥太郎が居を構えたことからと伝わる。ただ小島さんは「当時から蔵があったとは思えない」と蔵説に否定的だ。では、上百々のように激流の音が由来ではないか。小島さんに尋ねると「あながち間違っていないかも」と笑った

▼蔵々には1907年にできた水力発電所もある。現役で活躍する県内最古の水力発電所だ。水と関わりの深い土地である。水は田畑を潤し、電力を生み出し、時には災厄をもたらす。梅雨空を眺め、水との関わり方をいま一度考えてみたい。

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