緩やかな需要の回復で下落幅は縮小したが、新潟市と、人口減や高齢化が進む豪雪地帯などの地域間格差が鮮明になった。

 地価は地域の活力のバロメーターだけに心配だ。広い県土を持つ本県で、全体を底上げするために官民が知恵を絞りたい。

 国土交通省が今年1月1日時点の公示地価を発表し、全用途の全国平均は前年比プラス0・6%で2年ぶりに上昇した。

 調査は感染「第6波」の前で、人の流れが戻っていたことも追い風だった。新型コロナウイルス禍の影響が徐々に緩和され、都市部と近郊の住宅需要が全体をけん引した。

 一方、県内の全用途平均変動率はマイナス0・8%で27年連続の下落となったが、下落幅は前年比0・2ポイント縮小した。

 縮小は2年ぶりで、ウイルス禍による経済停滞が大きく影響した前年からわずかに持ち直しが見られた。

 特に新潟市は万代地区など商業地のほか住宅地でも伸びた。前年横ばいだった全用途平均変動率はプラス0・4%で、市町村別で唯一上昇に転じたのは明るい材料といえる。

 前年は下落した商業地と横ばいの住宅地がともに上昇、それぞれプラス0・3%となった。

 新潟駅では、高架化や広場など周辺整備事業が進む。拠点性向上や交流人口拡大に向け、市は新潟駅周辺-万代-古町の都心軸を活性化し、市域全体に活力を波及させる構想を示す。

 2022年度予算では、高機能オフィスの整備や企業誘致などに多額の予算を計上した。

 本県のけん引役といえる新潟市ににぎわいが生まれ、活気づくのは喜ばしい。

 ただ商業地最高地価では、新潟市は他市に比べ出遅れ感がある。本県の最高地点は新潟駅前の東大通1で1平方メートル当たり54万円と、近年は50万円台半ばで推移。13年に初めて60万円を割り込んでから回復していない。

 富山市は8年連続で上昇し、新潟市に6千円差に迫る。金沢市は近隣県でトップとなり、98万5千円。15年の北陸新幹線開業をきっかけに開発の動きが続いているとみられる。

 新潟市は中長期的に見て力強さに欠けるとの指摘がある。街づくりの歩みを着実に軌道に乗せたい。

 一方で気掛かりなのは、新潟市と他の県内市町村の間で二極化が解消されていない点だ。

 新潟市以外の全用途平均変動率は、横ばいだった聖籠町を除き、調査対象の25市町村のうち23市町村が下落した。

 人口減などのほかウイルス禍によるインバウンド(訪日外国人)の停滞も拍車を掛けた。近年のインバウンド増加に伴い地価回復の兆しが現れていた妙高市や湯沢町の商業地は、前年に続き下落した。

 感染拡大のマイナスは確かに大きい。一方でテレワークが当たり前になり、地方移住への関心が増すといった変化もある。

 時代の潮流を見据えながら、人口増や活性化に粘り強く取り組みたい。