政策や人間性より年齢に焦点が当たる結果となった。米大統領選に向けた候補者討論会はバイデン氏の高齢不安を露呈させた。一方でトランプ氏の評価が大きく高まったわけでもないだろう
▼討論会は中傷合戦だった。ゴルフ談義に脱線した果てに「子どもじみた振る舞いはやめろ」「子どもなのはおまえだ」とやり合った。81歳と78歳である。吉本新喜劇ならウケそうだが、超大国のリーダー選びの現実としては笑えない
▼にわかに「高齢者は何歳から?」の議論が浮上しているのは日本の話。5月に開催された国の経済財政諮問会議では、現在一般的な65歳を70歳に見直す提言があった。年金制度を再構築する視点から経団連の会長らが掲げた
▼日本老年学会は75歳案を提唱する。今年の報告書で「平均余命15年が期待される年齢」を老後の始まりとする国際的な指標を示した。何年生きたかではなく、あと何年生きられるかに目を向ける発想だ。日本に当てはめると75歳くらいになるという
▼報告書には内閣府の高齢者意識調査の結果が添えられた。2021年の調べで、70~74歳の半数は自分が高齢者だとは感じていないという。そういえば、映画「あぶない刑事」の新作で元気な姿を見せた舘ひろしさんや柴田恭兵さんもこの層だ
▼年を重ねただけで人は老いない。理想を失うとき初めて老いる-。米国の詩人サミュエル・ウルマンの「青春」から一節を引く。年齢による線引きは便宜的なもの。人それぞれ、活躍できる場で活躍を。