人類は古くから、肉体の限界を超える能力を求めて科学や技術を発展させてきた。例えば遠くのものをつぶさに見たいと願い、望遠鏡を発明した

▼望遠鏡の原理が確立されたのは17世紀初頭。以来、進歩を続けて巨大な反射望遠鏡や星からの電波を集める電波望遠鏡などが登場した。宇宙のかなたにある星雲を見つけ、恒星間のガスやちりが発する、目に見えない放射まで観測できるようになった

▼地球から宇宙を観測するのと反対に、はるか上空から地上の様子を調べる装置も発達した。気象衛星など人工衛星である。先日打ち上げられたH3ロケット3号機は新型の地球観測衛星「だいち4号」を目標の軌道に届けた

▼現在の主力である「だいち2号」の後継となる。当初の後継機「だいち3号」は昨年3月に打ち上げ予定だったが、ロケットの不具合で失われてしまった。今回は待望の後継機投入となった

▼従来に比べ観測エリアが4倍に広がり、地上の様子もより細かく把握できるようになる。今後、本格運用が始まれば、地殻変動や火山活動による微細な変化が把握でき、豪雨災害や地震の被害も広い範囲の状況を詳細につかむことができる。データの精度が向上し、より正確な台風の進路予測なども期待できるという。さながら、天から地上を見守る「神の目」のようである

▼災害が起きないに越したことはないけれど、県内も含めて頻発しているのが実情だ。少しでも被害を減らし、復旧を早めるために「神の目」を生かしたい。

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