埼玉県深谷市のJR深谷駅に降り立ち、駅舎を見ると少し驚いた。東京駅の丸の内駅舎にそっくりなのだ。東京駅で使われた赤れんがが深谷で生産された縁という。もっとも深谷駅の方はれんが風のタイル張りなのだが
▼東京駅のれんがを製造した会社を設立したのが深谷出身の渋沢栄一だ。新たな1万円札に肖像が描かれた。深谷の駅前広場には渋沢をあしらったからくり時計もあり、ちょっとした観光スポットになっている。スマートフォンで写真を撮っている人もいた
▼渋沢を生かしたまちづくりを進める深谷市は、新札発行の祝意を多くの人と共有しようと、くす玉を割る動画を全国から募集した。投稿動画を市のサイトで紹介している
▼新潟市でも撮影された。建設コンサルタント会社キタックのファウンダー中山輝也さんらがカメラに向かい笑顔で万歳した。中山さんが2010年度に本県で初めて「渋沢栄一賞」を受賞したことから企画された
▼この賞は、第一国立銀行など多くの企業の育成に携わり、社会活動にも尽力した渋沢の精神を受け継ぐ全国の経営者を顕彰している。本県では亀田製菓元会長の古泉肇さん、NSGグループ会長の池田弘さんも受賞した
▼渋沢は生前、何度か新潟を訪れている。戊辰戦争で荒廃した地域から銀行や石油会社などを興そうとした経営者や、前途有望な若者を後押しした。そんな渋沢の生涯はとても興味深い。また深谷を訪れてみようか。新札が2枚ほど懐から出て行くことになるけれど。