自然の中で活動する際は、ごみを持ち帰るのが鉄則だ。当然ながら極地でも同様で、南極観測の拠点である昭和基地も現在は全て日本に持ち帰っているという
▼2015年12月から17年3月まで基地の調理を担当した渡貫淳子さんは生ごみを減らそうと知恵を絞ったそうだ。方策の一つがリメーク。鍋の残り汁はカレーのベースにする。冷やし中華のトッピングが余れば春雨サラダにアレンジ。残った総菜類は細かく刻み、フランス生まれの塩味のケーキ「ケークサレ」の具にした
▼帰国後は食品ロスの削減などをテーマに各地で体験を語っている。今年3月には見附市で講演し当時の仕事ぶりを振り返った。食品ロスを出さない暮らし方など生活を見直すヒントを探ろうと、多くの聴衆が耳を傾けた
▼食品ロスの削減が社会的な課題になって久しい。政府は先ごろ、22年度の食品ロスは推計472万トンだったと発表した。推計を始めた12年度以降では最も少なく、30年度までに00年度比で半減させる政府目標を8年早く達成した
▼ただ、22年度は感染禍で多くの飲食店が営業を縮小した影響が大きいようだ。ロスの発生元は事業者と家庭の割合が半々で、家庭の方が削減率は小さい。私たちにもできることは、まだまだあるのだろう
▼リメークも一手。商品棚の手前にある、期限が迫ったものを買う「てまえどり」も一手。余分な食材を買わないのも一手だ。物価高騰の折でもある。「もったいない」という言葉を、いま一度つぶやいてみる。