健康維持にとって大切な体内時計は、24時間周期の昼夜の変化に応じて調節されるという。ならば、海中で隠密行動をとる潜水艦の乗員は昼夜をどうやって感じ取るのか
▼潜水艦の内部照明には白色灯と赤色灯が併設されている。作業のため明るい光が必要な発令所などは白色灯を常時点灯させることが多いが、ほかのスペースでは海上が昼間なら白色灯、夜間なら薄暗い光の赤色灯を使うという
▼「潜水艦のメカニズム完全ガイド」という本に教わった。著者の佐野正さんは川崎重工業で潜水艦設計部長を務めた人だ。技術的な解説を中心とした専門書だが、乗員の業務や生活にも言及している。その筆致には過酷な任務に従事する乗員への敬愛が漂う
▼艦の建造や保守を担う側と使う側が信頼関係で結ばれるのはいい。しかし、裏金から調達した資金で結びつきを強めていたとなれば看過できない。海上自衛隊の潜水艦修理契約に絡み、川重が架空取引で得た資金から乗員に金品を提供していた疑いが浮上した
▼川重によると、不正な資金捻出は遅くとも6年前に始まり、流用額は少なくとも十数億円に上る可能性がある。真相究明のため、防衛相直轄の防衛監察本部による「特別防衛監察」が実施されることになった
▼潜水艦は隠密行動が任務だが、不正な金品を隠密に受け取るなど許されるはずもない。海自では特定機密のずさんな取り扱いも確認され、幕僚長が引責辞任の意向という。不正は組織の敵だ。徹底した索敵が求められる。