「竹にはフシがある。そのフシがあるからこそ竹は雪にも負けない強さを持つのだ」。ホンダを創業した本田宗一郎の言葉である。植物学者の稲垣栄洋(ひでひろ)さんが著書で紹介していた
▼節がある竹は、しなやかに曲がるが簡単には折れない。節ごとに成長点があるから、伸びるのも速い。節目は成長の軌跡であると同時に再出発の拠点にもなる。強さと速さを兼ね備えた竹はホンダ創業者にふさわしい植物かも、と稲垣さんは記した(「大事なことは植物が教えてくれる」)
▼本田は前述の言葉に続けてこう言った。「企業にもフシがある。もうかっているときは、スムーズに伸びていくが、もうからんときが一つのフシになる。このフシの時期が大切なのだ」。企業にとっても人にとっても、こうした節目は原点に立ち返り物事を見つめ直すきっかけを与えてくれる
▼県央地域などに甚大な被害をもたらした7・13水害から、きょうで20年の節目を迎えた。身を押しつぶさんばかりの雨の勢いに恐怖を感じたことを覚えている。ただ、20年前のことだ。実感としての記憶がなかったり、そもそも事実を知らなかったりする人も増えているだろう
▼今年が節目となる災害はほかにも多い。新潟地震から60年、糸魚川市と妙高市にまたがる焼山の噴火から50年、中越地震から20年だ。新潟地震で顕在化した液状化など、かつての出来事から教わることは多い
▼それぞれの節目に改めて過去の教訓をすくい取りたい。節目が続く今年はとりわけ、である。