甲子園を目指す高校球児の戦いが佳境を迎えている。ヒリヒリするような好勝負の一方でワンサイドゲームも目立つ。新潟大会の4回戦まで59試合のうち約4割がコールドゲームだった。チーム力の偏りは否めないが、それぞれの全力プレーに優劣などない
▼西東京大会では0対66の試合があった。敗れた都立青鳥(せいちょう)特別支援学校はこの夏、全国で初めて支援学校単独で出場した。残念ながら力の差は歴然だった。出塁を許すたび盗塁され、外野への打球は何本もランニングホームランにされた
▼ただ、残念なだけの試合ではなかった。エースは足がつって途中降板するまで、打者23人に対し無四球だった。攻撃では初回の先頭打者がクリーンヒットを放った。部員12人が全員出場し、大きな声を掛け合った
▼プロの2軍戦でも使われるスタジアムで、バックスクリーンの電光掲示板に選手名が刻まれた。合同練習した他校選手がスタンドに駆けつけ、強豪校を思わせる応援で盛り上げてくれた
▼球場に流れる時間を、選手はどんなふうに感じていたか。3年生のキャプテンは試合が楽しみで、数日前から眠れなかった。小中学校では野球がしたくても入部がかなわなかった。代打で三振を喫したが「悔いはない」
▼0対66は障害があることによる力量の差とイコールだろうか。体力面や戦術面でハンディはあるにしても、経験を重ねた支援学校チームのプレーをまた見てみたい。「野球がしたい」。夢を温めている生徒は、県内にもきっといる。