北陸新幹線(写真)長野-金沢間の開業から7年が経過し駅周辺のまちづくりにどう取り組むか。

 敦賀(福井県)延伸を2年後に控え、民間主導の新たな動きに注目したい。

 ウイルス禍で利用客が減少し、開業効果も薄れる中で、大学の研究者や地元の起業家らが北陸新幹線沿線連絡会議を立ち上げた。

 会議は、駅周辺のまちづくりに関わる団体の活動状況や悩みなどを共有し、活動の強化や深化を図ることが目的だ。

 上越市の上越妙高駅西口でコンテナ商業施設「フルサット」を運営する北信越地域資源研究所の平原匡社長らが発起人となった。

 上越市や敦賀市を会場に先月、新幹線駅がある富山県高岡市などをオンラインで結び、第1回フォーラムが開かれた。

 参加者からは、開業当初はインバウンド(訪日外国人客)の増加などで地域が活気づいたものの、感染拡大とともに苦境に陥っている実態が報告された。

 上越妙高-糸魚川通過の乗客数は金沢まで開業した2015年3月14日以降の5年間、年間800万人前後を維持していた。

 ところが20年3月14日~21年3月13日は281万人(前年の35%)に急減。21~22年の同期間は363万人と持ち直したが、感染拡大前の半数にも至っていない。

 感じるのは、ウイルス禍の収束が見通せない中で、観光客増による一過性の活性化から、まちづくりに新幹線駅をどう生かすかという地に足の着いた取り組みが求められる時期が来たのではないかということだ。

 平原氏はフォーラムで、感染禍でテナントの入れ替えがあったときの苦労を紹介し、「新幹線を地域の『自分事』として捉え、駅を基点に地域の発展や共生を考えていくことが必要だ」と呼び掛けた。うなずける指摘だ。

 感染禍による利用客減を受け、フルサットは飲食業向けのテナントだけでなく、会議室の貸し出しなどビジネスの拠点づくりにも力を入れた。

 上越妙高駅西口の商業施設内には昨年10月、第5世代(5G)移動通信システム「ローカル5G」を整備したビジネス拠点が開設された。東京のIT企業がオフィスを構えるなど既に新たな動きが見えている。今後も注視したい。

 敦賀延伸は、上越地域がさらに関西圏に近くなることを意味する。観光需要だけでなく、ビジネス需要も取り込むことが、地域の持続的な発展には不可欠だろう。

 沿線地域が一体となって活性化への知恵を絞るには、行政の予算や権限に縛られない、民間の柔軟な発想が求められる。

 大切なのは、フォーラムを出発点に、息の長い取り組みを重ねていくことだ。

 各地の成功例や、得られた教訓などを十分に情報共有し、生き生きとした地域づくりに活用してもらいたい。