「初老ですね」。40歳を迎えた時、年下の同僚にからかわれた。「不惑でしょ」と胸を張ろうとしたが、わが身が「惑わず」の域には程遠いと自覚していたので苦笑いでごまかした
▼パリ五輪の総合馬術団体で銅メダルを獲得した日本チームの4人が「初老ジャパン」を名乗り、注目を集めている。4人は38~48歳で、平均年齢は41・5歳。代表チームを「○○ジャパン」の愛称で呼ぶことは多いが、独特のネーミングセンスが異彩を放つ
▼チームで愛称について雑談した際、馬をイメージした「ペガサスジャパン」や、全員が昭和生まれの「昭和ジャパン」などの候補が挙がった。そんな中で、響きがかわいいなどの理由で「初老ジャパン」に決めたという
▼「初老」はもともと、中国から伝わった長寿の祝いの一つだった。40歳以降10年ごとに節目をことほいだ。今の還暦や古希などのルーツらしい。寿命が短かった時代は、40歳は老人の域に足を踏み入れる時期だったのだろう。手元の辞書は「初老」について「現在では60歳前後と意識される」と解説している
▼一般に、老いは衰えにつながる。スポーツの世界ではなおさらだろう。しかし馬術は馬との呼吸など、経験が特に物を言う競技だという。あえて「老」を名乗る姿勢に大人の余裕がにじむ
▼「老」という字は、経験豊かな姿や熟達している様子も意味する。実社会でも、積み重ねた経験は財産になる。年を重ねるのは悪いことばかりじゃない。初老ジャパンの面々に教わった。