
豪農伊藤家の旧宅、北方文化博物館(新潟市江南区)の一角に、「作事場(さくじば)」という建物がある。屋敷や庭などの維持、修繕など「作事」と呼ばれる仕事をする人たちの事務所だ。作事は明治期に現在の建物ができて以来、伊藤家の暮らしを支えてきた。戦後、博物館に姿を変えてもなお、かつてのたたずまいを後世に残す役割を担っている。
伊藤家は、江戸中期に初代文吉が、阿賀野川と小阿賀野川に挟まれた旧横越村沢海(そうみ)に分家した。畑のほか藍での商いに力を入れた。
前渡し金で周辺の藍を確保し、恵まれた川の水運を生かして3代目の頃に富を築いた。金融業も手掛け、1873(明治6)年に地租改正で税が金納に変わると、多...
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