医師や医療従事者が十分な休息を取ることができ、健康で働ける環境は、医療の質を維持する前提になるものだ。医療を受ける私たちの安心にもつながる。

 しかし本県は深刻な医師不足から抜け出せず、医師らの健康がむしばまれる懸念が拭えない。働き方改革をしっかりと進めるためにも、医師不足を解消していかなくてはならない。

 本県の医師総数は2020年末時点で4803人と、前回調査時の18年末に比べ76人増えたことが厚生労働省の調査で分かった。

 人口10万人当たり218・2人で、都道府県別の順位は43位と、前回調査時より一つ上がった。

 とはいえ、全国平均の269・2人に水をあけられている。伸び率も1・6%増と全国平均の3・8%増には届いていない。

 厚労省が示した医師偏在指標で全国ワーストの医師少数県とされたことなどを受け、県はこれまで医学部の地域枠拡大や臨床研修医の確保など対策を講じてきた。

 今回の調査で医師数が増えたのは、こうした取り組みが実を結びつつある現れといえるだろうが、全国の増加率などと比べれば成果が出ているとは言い切れない。さらなる対策強化が不可欠だ。

 医師不足が慢性化すると、医師の働き方改革が着実に進むかどうかが危ぶまれる。

 勤務医の時間外労働(残業)は24年度から、上限が年960時間に制限される。地域医療を担うなど長時間労働がすぐに是正できない医療機関は例外的に年1860時間となる。月換算でそれぞれ80時間、155時間となる。

 働き方改革では19年度に一般労働者の時間外労働を原則「月45時間、年360時間」、最長でも「月100時間未満、年720時間」とする上限規制が導入された。

 一方医師は、医師法が診療を原則拒めないと定める「応召義務」があるため、適用を5年間猶予し、規制内容が検討されてきた。

 ただ例外的な基準の1860時間は一般労働者に比べてはるかに長い。政府は35年度末までに例外対象の医療機関をなくすとする目標を、前倒しで実現してほしい。

 長時間労働は心身に深刻な影響を及ぼしかねない。

 新潟市民病院で16年に女性医師が過重な時間外労働が原因でうつ病を発症し、その後自殺した問題を巡る訴訟の判決で、新潟地裁は業務とうつ病に因果関係があったと認めた。うつ病を発症する直前の女性医師の時間外労働は月160時間を超えていたという。

 病院側は09年に労働基準監督署から時間外労働の是正勧告を受けていた。そのことを病院や市が真摯(しんし)に受け止めていれば、もっと早く労働環境の改善に取り組むことができたはずだ。対策を怠ったことは残念でならない。

 同病院は医師の長時間労働抑制に取り組んでいるが、月100時間以上の時間外勤務を強いられている医師はなお多い。そうした働き方は一刻も早く根絶したい。

 新型ウイルス禍が長引き、医療現場に負荷がかかり続けている。労働時間を減らすための対策をすぐにでも始め、医療現場を過重労働から守らねばならない。