大仕事をやってのけるのではないか、という予感はあった。優勝候補の一角を、全国的には無名の本県代表が倒した。夏の甲子園大会で新潟産大付の初戦をテレビ観戦しながら、高校野球の醍醐味(だいごみ)を存分に味わった

▼初出場とは思えない「のびのび野球」を貫いた。好守でリズムをつかみ、狙い通りの接戦に持ち込んだ。攻撃陣は速球に食らいつき、積極的な走塁で終盤の逆転劇につなげた。宮田塁翔、田中拓朗両投手の継投もピタリとはまった

▼相手の花咲徳栄(埼玉)は2017年夏の優勝校である。新チームになった昨秋から、強豪ひしめく埼玉大会を負けなしで「聖地」に乗り込んできた。プロ注目の強打者も擁する。魔物がすむという甲子園で、下馬評は覆った

▼ただまぐれや奇跡ではないことは、ノーシードで臨んだ新潟大会の戦績が示している。甲子園常連校の新潟明訓、日本文理、中越を次々に破った。決勝は勢いそのままに春の北信越大会を制した帝京長岡に競り勝った

▼吉野公浩監督の飾ることのない素朴さ、思い切りのいい采配も選手を勇気づけた。柏崎出身で地元の中学生の硬式野球チームを長く率いてきた。人柄に引かれて新潟産大付に集まった部員も少なくない

▼柏崎を中心にメンバーのほとんどが県内出身というチームが、令和初の県勢勝利をつかんだ。周辺校の応援も得てスタンドは盛り上がり、地元は歓喜に沸き立った。14日に予定される次戦への期待が、いや応なしに高まる。お盆の楽しみが一つ増えた。

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