きょうは「山の日」。県内最高峰の山は?と問われ即答できる人はどれぐらいいるだろう。糸魚川市と長野県小谷村にまたがる小蓮華山だ。標高2766メートル。一番高いのに「小」がつくから案外、正答率は低いかもしれない

▼「れんげ、行きませんか」。知人に誘われ、標高2400メートルの白馬大池を目指す登山に参加した。途中には湿原などもあり、蓮華エリアとして地元の人らに親しまれている

▼高山植物にも出合えるという。糸魚川市街から車で1時間と少々、標高1500メートルにある山小屋の駐車場に車を置き、登り始めた。しかし風雨に阻まれた。やがてやむと思われたが予報が外れ、風で体温を奪われかねないと引き返した

▼山の天候の難しさを実感したが、登れなくても楽しみがあるのが蓮華の奥深さだ。雨上がりの山道を15分ほど歩くと四つの温泉が点在する。雲上の秘湯と呼ばれる蓮華温泉だ。北アルプスの大パノラマを眺めながらの入浴は野趣に富み、大地と一体になった気分を味わえる。紅葉深まる10月中旬まで営業している

▼蓮華エリアは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に認定された「糸魚川世界ジオパーク」を構成する区域の一つである。地元関係者は「たくさんの人に知ってほしい」と語る

▼国内最高峰の富士山を巡っては「写真映え」する構図を求めて特定の場所に訪日客が殺到した。観光公害は避けたいが、蓮華の魅力を味わい、ヤッホーの代わりに大声で叫びたくなった。「こちらの景色も映えますよ!」

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