新潟土産は数あれど、先方に喜ばれること請け合いの筆頭格は笹団子では。ササの香りをまとった甘味が多くの人を笑顔にする。この季節は冷やしてもいける。帰省からUターンする際に、まとめ買いする人もいるだろう

▼ササで丁寧に包まれ、ころんとした姿が愛らしい。ササをむくのも楽しみの一つだ。固く結ばれたひもをほどき、一枚、また一枚とむいていく。葉にくっつかず、団子の滑らかな肌が現れると妙にうれしい

▼そんな笹団子がピンチだという記事を先日の紙面に見つけた。ササの採り手が高齢化で減少し、猛暑やクマの出没もあって、供給不足が深刻になっている。和菓子店は従業員自ら山に採りに行ったり、海外産を使い始めたりと対応に四苦八苦しているようだ

▼ササは防腐効果があり、古くから食材を載せたり、くるんだりするのに使われてきた。本県でも笹団子や三角ちまき、笹寿司などの伝統食が親しまれている。料理の彩りとしても、皿の上をきりりと引き締める

▼代表的な種類のクマザサは葉を煎(い)ってお茶にするなどして活用されてきた。「熊笹」と書くこともあるが、基本的には「隈笹」らしい。冬に葉の周囲が枯れて「隈取り」のようになるからとされる。一方で、クマの食料になることもある

▼笹団子が全国的に有名になったのは1964年の新潟国体が契機だったというから、ちょうど60年になる。これからも、多くの人に親しまれる存在であってほしい。ササ確保のご苦労をしのびつつ味わいたい。

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