多数の市民を虐殺する卑劣な戦争犯罪が行われているとすれば、断じて許すことはできない。真相の究明が必要だ。

 ウクライナ当局は2日、首都キーウ(キエフ)を含むキーウ州の全域をロシア軍から奪還したことを発表した。

 だが、キーウ近郊ブチャなどで明らかになったのは、目を覆うばかりの悲惨な状況だ。

 道路のあちこちには平服姿の市民の遺体が横たわり、爆弾が仕掛けられた遺体もある。

 手を縛られるなどして殺された遺体も多数見つかっている。ウクライナ側は非武装の市民が処刑されたと主張している。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は「ジェノサイド(大量虐殺)だ」と非難した。

 ロシア軍の攻撃でこれまで多くのウクライナ市民が犠牲となってきたが、ロシアは民間人殺害を否定してきた。ブチャでの関与も否定し、ウクライナ政権が演出したと主張している。

 プロパガンダはロシアの常套(じょうとう)手段であり、言葉通りには受け止められない。

 戦時に関する国際法は市民や市民生活を支えるインフラを故意に攻撃してはならないとしている。

 欧米や日本を中心に、国際社会はロシアが戦争犯罪を重ねているとして批判を強めている。

 ウクライナ当局は国際刑事裁判所に調査を求めた。国連のグテレス事務総長は「独立した調査が不可欠だ」と訴えた。徹底調査で事実を明らかにしてもらいたい。

 ロシアのプーチン大統領は当初、短期間でキーウを陥落できると見込んでいたとされる。しかしウクライナ側の抵抗で苦戦が続き、侵攻から1カ月以上たっても落とせなかった。

 このため、キーウを撤退しウクライナ東部に部隊を集中させる作戦に変更したとみられる。

 懸念されるのは、今後も各地で多くの市民が犠牲になる恐れがあることだ。

 ロシア側の包囲攻撃が続く南東部マリウポリでは、10万人以上の市民が取り残されているが、水道や電気は使えず、食料や医薬品の搬入も絶たれている。

 一方、ロシア軍も甚大な被害が出ている。各国の制裁で国内経済は深刻な打撃を受けている。

 両国の停戦交渉が続く中、ウクライナ側は2日、首脳会談の可能性に言及した。プーチン大統領は自らの非を認め、直ちに全ての兵を引き上げるべきだ。

 ウクライナから逃れた避難民は400万人に上る。隣国のポーランドを訪れた林芳正外相は、来日を希望する避難民ら数十人を政府専用機に同乗させて帰国する。

 政府は各国との協調姿勢を示すだけでなく、今後も積極的に避難民を受け入れるなど、腰を据えた人道支援に力を入れてほしい。