きのうは終戦記念日だった。日本人にとっては79年前に太平洋戦争が終わった日である。8月はかつて直面した戦争について思いを巡らす機会が多い

▼一方、今の世界には戦争が現在進行形の国や地域がある。ロシア国境にほど近いウクライナ第二の都市ハルキウで暮らしていた少女は、戦火の脅威に直面した頃のことを日記に残していた。その文面からは平凡な日常が一変する様子が伝わってくる

▼少女はロシアが侵攻する直前に12歳の誕生日を迎えた。メディアは戦争が近いと報じていたが、スマホには続々と祝福のメッセージが届き、家族らがパーティーを開いてくれた。周囲にはまだ平和な日常があった

▼ほどなくして、早朝に突然の爆発音で目が覚めた。ロケット弾が飛んできた。「考える時間もなかった。もし戦争が始まったら、どうすべきなのか、だれも教えてくれなかった」。少し前までの毎日とは、あまりに大きな差があった

▼避難して数日後、自宅にミサイルが撃ち込まれた。爆弾が落ちるたび心臓が止まりそうになった。国外に脱出し、現在はアイルランドで暮らしているという。この少女、イエバ・スカリエツカさんの日記は、日本でも「ある日、戦争がはじまった」のタイトルで出版された

▼原題の直訳は「あなたは戦争が何なのか知らない」。現代の多くの日本人にとって戦争は未知の存在といえる。ウクライナでも、そういう人が多かったのだろう。でも戦争は始まった。私たちも同じ立場になることはないか。

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