真夏の日差しの下で農作物がグングンと成長する季節となった。昨夏のような猛暑と渇水にならなければいいのだが

▼植物の成長に欠かせないのが光合成だ。日光のエネルギーを使い、水と二酸化炭素から酸素とデンプンなどの養分を作り出す。光合成は主に葉っぱで行われる。植物の成長はもちろん、植物を食べて生命をつなぐ私たちも、葉に頼っていると言えるだろう

▼とはいえ、葉をいつまでも大切にしすぎてはいけない作物もある。糸魚川市と上越市で栽培される「越の丸茄子(なす)」だ。直径10センチ前後と大玉の高級ブランドで、首都圏では1玉500円ほどで取引されるという。食感から「ナスの大トロ」と称される

▼黒々とした光沢とつやが特長のため、色が悪かったり傷が付いたりすると商品価値はガタ落ちしてしまう。その原因の一つが葉だ。太陽の光を葉が遮らないよう、葉が実に触れないようにせん定を怠れない

▼越の丸茄子を育てて40年以上という糸魚川市の橋立力さんはこの季節、午前4時半から農業用ハウスで収穫と出荷作業に汗を流し、日中は葉のせん定に追われる。葉の色つやにも気を配り、肥料を足すなど手塩にかける

▼葉は実が育つのになくてはならないが、必要なくなる時期も訪れる。成長への支えも、いつしか妨げになることもある。親の一人としては、どきりとしてしまう。「親の意見と茄子の花は千に一つも無駄はない」というけれど「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」でもあろう。ナスから学ばねば。

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