100年以上前の新潟市中心部を撮影したパノラマ絵はがきが見つかったと本紙記事で知った。同市の旧小澤家住宅で展示されており、実物を見に足を運んだ

▼絵はがきは白黒写真が印刷されていて、全8枚。一続きにつなげると現在の新潟島の風景が一望できる。撮影年は不明だが、写っている建物などから1912(明治45)年から18(大正7)年ごろとみられる

▼08(明治41)年には大火があり、一帯の建物の多くや初代萬代橋が焼けた。写真の街並みは再建されており、萬代橋も2代目が架かっている。道を行き交う人々は荷車を引いたり、自転車に乗ったり。大火から復興したエネルギーが感じられる

▼一般的な写真では画角が限定されるが、パノラマ形式だと伝わる情報量が一気に増えると感じた。自分自身が当時にタイムスリップし、高い建物から街並みをぐるりと見下ろしているような気分になった

▼パノラマとはギリシャ語で「全て」を意味する「pan」と「風景」を指す「horama」の合成語という。西洋では建物内の壁一面に精巧な風景画などを描いたパノラマ画が評判を呼んだ。日本でも19世紀末、新発田市出身の実業家、大倉喜八郎らが出資して東京・浅草にパノラマ画の展示施設が設置された

▼今で言うバーチャルリアリティー(仮想現実)が楽しめるという触れ込みだったようだ。確かに、そんな力があるような。「ものを見るときは視野を広くして」。そんな声が写真から聞こえてきたような気もした。

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