「運動中は水を飲んではいけない」。中学生時代にたたき込まれた。試合で1勝したら大喜びするレベルのバレーボール部だったが、休憩時間にはうがいをするふりをして、こっそり飲んだ
▼ただ夏休み中の思い出は、水うんぬんよりも体育館の換気に躍起になったことの方が鮮明だ。朝、前日から閉めきられていた体育館に入り、部員で協力して窓を全て開けて立ちこめる蒸し暑い空気を逃がす。少しでも不快感を和らげたかった。練習中はたまに吹き込む風で涼んだ
▼当時も十分暑かったが、気象庁は先日、日本の今年7月の平均気温は1898年の統計開始以降で最も高かったと発表した。こうも暑いと、窓の開け閉めだけで暑さ対策をするのは難しそうだ
▼だが県内の市町村立小中学校のうち、体育館に固定式の冷房が設置されているのは2校のみという。本紙が6月に調査して報じた。設置には大がかりな工事が必要で自治体の負担が大きい。国の補助制度も、建物に断熱性が必要という条件がネックになっている
▼体育館は災害時には近隣住民の避難所にもなる。本紙記事は、固定式の冷房は無理でも移動式エアコンなどで暑さをしのぐ例を紹介していた。まだ少数だが、今後新たに固定式の設置を予定する自治体もある
▼地球温暖化に歯止めがかからなければ、冷房なしでは利用する人の命が脅かされる。「水を飲むな」の常識が「しっかり水分補給を」に変わったように、今や体育館の冷房はぜいたくな設備ではないのだろう。