学校の夏休みが終わって授業が再開される時期だ。宿題を手伝ったという保護者もいるかもしれない。心を鬼にして手を出さなかったという人もいるだろうか
▼鬼は恐ろしい存在だが、佐渡の鬼太鼓など人に親しまれる鬼もいる。そんな鬼は邪気を払い、人の世の安寧をつかさどる神のような存在なのだろう。心を鬼にするというのも相手のためを思って厳しくすることだ
▼むやみに厳しいのは考え物だが、やむを得ず心を鬼にせねばならない場面はある。例えばチャイルドシートの装着だ。子どもに障害がある場合などを除いて6歳未満は義務づけられている。しかし子どもが嫌がったり、周囲がかわいそうに思ったりして装着されないことがある。その結果、幼い命が失われる事故が後を絶たない
▼今月18日には福岡市で軽乗用車とバスが衝突し、軽に乗っていた7歳と5歳の姉妹が亡くなった。チャイルドシートやジュニアシートは使っておらず、シートベルトで腹部が強く圧迫されたらしい
▼チャイルドシートなしだとシートベルトが首や腹部を圧迫し、深刻なダメージを受ける恐れがある。日本自動車連盟(JAF)はシートの使用推奨基準を現行の身長140センチ未満から150センチ未満に引き上げる方針だ
▼子どもを思う仏の心があるなら、嫌がられても心を鬼にせねば。気を紛らわすおもちゃを用意したり、時間に余裕を持って行動したりと、大人も工夫が必要だろう。「かわいそうだから」。そんな思いが子どもを危険にさらす。