早場米が出回り始め、コメ売り場は落ち着きを取り戻しつつあるだろうか。お盆過ぎの頃、近所のスーパーからコメが消えた。別の店に回ると無洗米2キロが2袋だけ残っていた。「やっと一つ買えた」。家族が目を丸くしていた

▼「社長は山形にコメの買い出しです」。職場近くの食堂の店員さんが言っていた。飢えを恐れる新潟のことわざに昨秋、小欄で触れた。「米びつの舌だし」。コメの蓄えが尽き、器の底が見え始めたら心細い

▼そんな心配の声がこの夏、全国であふれた。日本一のコメ産地でも、その一端を垣間見るとは。コメ価格は20年ぶりの高値になった。昨年の高温障害による流通量減少や訪日客の急増、小麦原料のパンなどに比べた値ごろ感…。原因はいろいろあるだろう

▼「令和の米騒動」とは大げさだが、これを王国復興の転機にできないものか。コメ消費量は半世紀で半減し、稲作農家は5分の1に。高齢化と後継者難は進むばかりだ。一方、食料自給率が4割に満たない中でもコメはほぼ100%である

▼今回の騒動で、私たちにとってコメがいかに大切かを改めて実感した人も多いのでは。「やっぱりご飯だね」という主食の再評価が広がればうれしい。コシヒカリだけでなく、新潟名産の米菓や清酒も輸出は伸びている。米粉をはじめとした加工品の生産にも力が入る

▼台風が収穫に与える影響が気がかりだが、消費者は新潟の新米を待ち望んでいるはず。コメ王国のプライドにかけて、日本の食卓を支えたい。

朗読日報抄とは?