「行政のコンビニ」と県警のある署長が口にしていた。当世の警察署のことだという。24時間営業の公的困りごと対応所といった意味だと説明してくれた
▼近頃は企業や公的機関の多くが、夜間の電話対応を自動音声に切り替える。警察は違う。必ず署員が応対する。電話する当事者は切実なのだろうが、警察の本来業務とは言いがたい「通報」も多い。夫婦げんか、犬猫の死骸処理、ごみ屋敷への対応などなど
▼「夫に初めて大声を出された。怖かったので来てほしい」。そんな通報で臨場したこともあったという。万一を想定せざるを得ないのだ。「警察業務として持続可能な状態と言えるだろうか」。署長も頭を悩ませる
▼昨年の全国の刑法犯認知は70万件余りだった。新型ウイルス禍を経て2年連続で増えたが、ピークの2002年からみれば4分の1。交通事故死者も同様で、傾向としては減少している。にもかかわらず、警察業務は増え続けているという
▼作家の野地秩嘉(つねよし)さんは著書「警察庁長官」で、民事不介入が原則であるはずの警察業務が「市民生活応援型」になっていると指摘した。「犯罪捜査に特化する世界の警察と比べると非常に特殊だ」と続ける
▼高齢化や人口減少が進み、地域コミュニティーは細る。「行政のコンビニ」は時代の要請だろうか。ただ、面倒くさいことは一切合切人任せ-、そんな風潮が警察依存の背景にあるとすれば考えものだ。犯罪に遭ったときにこそ、頼れる警察であってもらわないと困る。
