銀行のATMに行ったら、振り込め詐欺の防止を呼びかける啓発グッズを手渡された。何だか年寄り扱いされたようで、少々気分を害してしまった-
▼ことし2月まで本紙おとなプラスにエッセー「オヤジの世相みじん斬り」を連載していたコント山口君が以前に書いていた。掲載時は66歳。法律や制度では高齢者の定義を65歳以上とすることが多いが、その年齢を超えても高齢者に区分されることに抵抗を感じる人もいるだろう
▼高齢者の定義を引き上げるべきだとの声が経済界から上がっている。人口減で働き手不足が深刻になり、働きたい人がずっと働ける社会をつくりたいという。60歳が多い企業の定年や、原則65歳の年金受給開始年齢の引き上げにつながる可能性がある
▼年を重ねても元気な人は増えた。日本老年学会は6月、医療の進歩などによる心身の若返りを踏まえ75歳以上を高齢者とした2017年の提言が現在も妥当だとする検証結果をまとめた
▼年金や医療の財政は厳しく、一定の年齢になっても支え手になってもらわねばならない。頭で分かってはいても、やはりため息が出る。年金だけでは暮らしが厳しく、低賃金でも働かざるを得ないという人も多い。「死ぬまで働かされる」という嘆き節も聞こえてくる
▼人生100年時代、元気に働き続ける人が増えることは喜ばしい。一方、働きづめで余裕のない人のことも忘れてはならない。年齢の線引きだけでなく、豊かな老後はどうあるべきかという議論も深めたい。