佐渡市の二ツ岩大明神は、島にすむムジナ(タヌキ)の大親分と伝わる「二つ岩団三郎」を祭っている。社を訪ねた知人が「本殿極めて危険 倒壊のオソレアリ!」との張り紙を目にして、残念がっていた
▼ムジナの皮は、金の製錬で使う送風機「ふいご」の材料になった。「佐渡島(さど)の金山」が世界文化遺産登録を果たした一方で、大親分を祭る場所がこの状態では、金山繁栄に身を捧げたムジナたちが浮かばれない
▼国や自治体の指定文化財にならなくとも、地域の人が宝のように大切にしている神社仏閣や史跡は多い。ただ、建物などの老朽化が進み、どう保全するかが課題になっている。特に過疎高齢化が進む地域では深刻だ
▼指定文化財より緩やかな規制で保護する登録制度もあるが、財源不足などで導入が進んでいない。一方で、上越市は「地域の宝」認定制度を4年前に始めた。認定されると保存や活用への助言などを受けられる。文化財保護法に基づく文化財保存活用地域計画には、これまで県内で新発田と糸魚川、十日町の3市が認定された。計画策定には地域の人らも加わり、意見を出し合った
▼「歴史文化が身近に感じられるまち」をうたった新発田市の計画も「地域の宝」登録制度を盛った。来年度から詳細を検討する。身近にあっても、その価値が知られていなかった宝を改めて認識してもらう。そんな狙いがあるという
▼私たちの足元にある文化や伝統に光を当てたい。それが地域の魅力アップにつながるのだろう。