よどみなく自信たっぷりな口調だったり、整然と並んだ活字だったり。そういったものから得られる情報は確度が高いと信じがちだ。けれど、そんな情報の中にも誤りは混在する
▼各種情報の真偽を検証する「ファクトチェック」という用語が知られるようになって久しい。本紙に初めて登場したのは2016年9月。トランプ氏とクリントン氏が対峙(たいじ)した、米大統領選の討論会の記事だった。トランプ氏の言葉には事実関係の誤りが多く、クリントン氏にも不正確な発言があったと報じていた
▼8年の時が流れトランプ氏の相手がハリス氏に代わっても、そうした状況に大きな変化はなかったようだ。ただ今回は、司会を務めたキャスターが事実関係の誤りを度々指摘していた
▼「(不法移民が)犬や猫など住民のペットを食べている」とトランプ氏が述べた際は、司会者がすかさず「当局に確認したが、移民にペットが傷つけられたという信頼できる報告はない」と述べた。米メディアが日頃からファクトチェックに取り組んでいる姿をうかがわせた
▼わが国では自民党の総裁選が告示され、立憲民主党も代表選のただ中にある。雄弁に政策を語る候補者の発言に不正確な情報はないか。耳を澄ませ、目を凝らしたい
▼米国の若者に影響力がある人気歌手テイラー・スウィフトさんは交流サイト(SNS)への投稿で今回の討論会に言及し、こう書き込んだ。「誤った情報に対抗する最も簡単な方法は真実にある」。そうであると信じたい。