洋服、牛鍋、レンガの建物…。明治初めの文明開化で欧米から入ってきた物は多い。石油ランプもその一つ。灯油を燃料にした照明器具は従来のろうそくやあんどんよりずっと明るく、人々に新時代の到来を実感させた
▼北越戊辰戦争に敗れた長岡で、その石油ランプを囲む集団があった。長岡藩大参事の三島億二郎や小林虎三郎、商人の岸宇吉ら20人余り。身分の垣根を越え、敗戦で疲弊した長岡の復興策を話し合った
▼「新時代を灯(とも)す明るいランプのもと、身分を分けず多様な者が集まる会をつくろうではないか」。有志でつくる億二郎の顕彰会が出版した「長岡復興の恩人-三島億二郎物語」には、億二郎がこう呼びかけ「ランプ会」を結成する場面がある
▼同書によればランプ会では東京の最新情報を交換し、長岡の産業振興策などを議論した。それを基に億二郎は学校や病院、銀行をつくった。茶の生産や製陶所の運営、しょうゆ造りに挑む者もあった
▼新型ウイルス禍を経て、ビジネス界では人々が集う「場」の重要性が再評価されている。雑談から課題の解決策が生まれたり、意思疎通の改善で組織力が上がったりといった効用があるからだ
▼起業を支援する拠点施設が県内各地にできている。長岡市の「ナデックベース」では学生や企業関係者、研究者らが交流している。起業の少なさは本県経済の大きな課題。「令和のランプ会」から「令和の億二郎」が生まれ、地域を活性化させる事業や産業が生まれることを願っている。