犬や猫を飼う人の多くが、毛並みの手触りに癒やされているようだ。わが家の飼い猫もシニアと呼ばれる年齢になり、毛並みにも張りやつやはなくなったが、触れると何だかほっとする

▼絵本作家の岩神愛さんが以前書いていた。愛猫を亡くした後、無性に恋い焦がれたのが毛の手触りだった。あの柔らかい毛に触りたい。でも、それはもうできない…。そんな岩神さんを救ったのは愛猫の「遺髪」だった。生前ブラッシングした際に抜け毛を取っておいたという

▼そっと触れると、愛猫の感触やぬくもりを思い出した。その手触りを岩神さんは「モフモフ」と記した。「ふわふわ」とも「ふかふか」とも違う。岩神さんが愛した手触りは「モフモフ」であった

▼文化庁による2023年度の「国語に関する世論調査」で「もふもふ」を「動物などがふんわりと柔らかそう」との意味で使う人は52・6%だった。この表現を他人が使うのが気にならないという人も81・9%に上った。広く使われるようになったのは2000年代に入ってからのようだが、かなり定着したといっていいのだろう

▼私感ながら「もふもふ」は「ふわふわ」に比べ、いっそう生き物の愛らしさを表現しているように思う。「ふわふわ」がどこか頼りなげな雰囲気もまとうのに対して「もふもふ」は血の通った温かみを感じる

▼人々がより的確な表現を求めてたどり着いた言葉だとしたら、日本語の進歩と言えるのではないか。日本語の豊かな営みを垣間見た気がする。

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