野球は「3」と縁が深いスポーツである。3ストライクになると打者はアウト。アウトが三つで攻守交代。選手は3の3倍の9人だし、試合は9回までだ
▼日本では選手の理想像をこんな言葉で言い表す。「走攻守の『三拍子』がそろう」。この言葉を、とんでもないレベルで体現する選手がいる。言わずと知れた、米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手である
▼三拍子のうち「攻守」は、投打の二刀流で野球の本場に旋風を巻き起こし、実力を証明済みだ。きのうは前人未到の「51本塁打、51盗塁」に達して「走」でも超一流であることを見せつけた
▼得点に直結する本塁打にはパワーが求められ、得点の可能性を高める盗塁にはスピードが不可欠。両方の要素を兼ね備える打者は少ない。そもそも大リーグでは「40本塁打、40盗塁」が偉業とされた。大谷選手以前に達成したのは、わずか5人しかいなかった
▼大谷選手は従来の偉業の水準を軽々と飛び越えた。至難の業と思われた「50本塁打、50盗塁」の節目をあっさり達成し、さらに数字を積み上げた。現実離れしたような展開に、わが目を疑った人も多いのではないか。伝説と呼ばれるだろう大記録を引っさげポストシーズンへ、さらにはワールドシリーズ制覇を目指す
▼右肘手術の影響で打者に専念したシーズンで「走攻」の金字塔を打ち立てた。来季は二刀流の復活が期待されている。名実ともに走攻守の三拍子がそろう姿を見せてくれるのではないか。伝説の歩みはまだ続く。