灯火親しむべし。中国の古い漢詩の一節を引くまでもなく、涼しい秋の夜長は読書を楽しむのにぴったりだ。ただ、共感するという人はもはや少数派だろうか

▼9月に公表された「国語に関する世論調査」の結果に驚いた。本を普段読まない人が6割を超えた。半数を超えたのは初めてだという

▼本は読みたい人が読み、必要になったら手に取ればいい、と言ってしまえばそれまでだが、読書を日常から遠ざけてしまうのはもったいない。ことさらそう感じるのは、県内には個性的で居心地良い図書館が増えているからだ

▼小千谷市にも先日、斬新な図書館がお目見えした。書架が可動式で多様な空間利用ができる。気軽に立ち寄れるあか抜けた憩いの場になっており、従来の図書館の概念を飛び越えたよう

▼ブックディレクターなる専門家が選書や分類を手がけたのは、長岡の「互尊文庫」と弥彦の「らいわ弥彦」。本棚の見せ方がユニークで好奇心をそそる。名建築も多い。新潟の豊栄図書館は安藤忠雄さんが設計した。三条の市立図書館本館は隈研吾さん、十日町の情報館は内藤廣さんだ

▼建物に血を通わせるボランティアも。新潟市西蒲区の4館では、かつて図書館の新設を求めて奔走した区民が催しの企画など図書館愛あふれる活動を続ける。その一人、小林由美さんは言う。「読書は主体的な行為。主体的に考えて行動する市民を育てる図書館は民主主義の砦(とりで)だと思う」。大事な砦を利用しない手はない。まずは図書館親しむべし。

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