スポーツの大会では時に敗者復活戦が実施される。ことしで106回となった全国高校野球選手権大会にも、そんな歴史がある。甲子園球場ができる前、1916年の第2回大会で採用された

▼当時の大会名は全国中等学校優勝野球大会。第3回大会では1回戦で敗れた愛知一中が、敗者復活戦を勝ち上がって優勝した。しかし、一度負けた学校が優勝するのは違和感があるという人も多かったらしい。敗者復活戦はこの大会が最後になった

▼昨今、政治の世界で敗者復活といえば、衆院選での比例復活だろう。現在の小選挙区比例代表並立制では、選挙区に出馬した人が比例代表に重複立候補することも認められる。選挙区で敗れても、得票率によっては比例代表で復活当選する道がある

▼少数党に配慮して導入されたようだが、批判的な声もよく聞く。有権者の中には、ある候補を当選させまいと対立候補に投票する人もいる。せっかく選挙区で落選させても、比例代表でよみがえることを疑問視する声は根強い

▼比例復活につながる重複立候補が、にわかに注目を集めている。15日の衆院選公示に向け、石破茂首相は自民党のいわゆる「裏金議員」の一部を非公認とし、処分がより軽かった人も重複立候補を認めない方針を決めた。本県関係では2人が比例との重複ができず、選挙区で勝つしか生き残れない

▼永田町からは悲鳴や怨嗟(えんさ)の声が聞こえる。もっとも、敗者復活の制度自体が望ましいものかどうか。いま一度考えてみてもいい。

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