議員にとっての使い勝手を優先し、肝となる透明性の確保は先送りされた。これではあまりに身勝手だ。5カ月も費やしながらこの程度の見直しにとどまるようでは納得できない。

 国会議員に歳費(給与)と別に支給される月額100万円の「文書通信交通滞在費」を巡り、与野党6党は日割り支給へ変更することで合意した。改正案の審議は進んでおり、14日に衆院を通過、15日に参院で成立する見通しだ。

 文通費は昨年秋の衆院選後、1カ月のうち在職がわずか1日でも満額の100万円が支給されるとして問題になった。

 与野党は昨年12月の臨時国会で満額支給を見直すとして一致したものの、野党が求めた使途公開の義務化などで合意できず、法改正には至らなかった。

 急に事態が動いたのは、参院石川選挙区補欠選挙の投開票が今月24日に迫る中、法改正しておかなければまた当選者に満額が支給されてしまうためだ。

 日割り支給を先行決着しておくことで、国会が問題を放置してきたと批判されるのを回避する狙いがあったのだろう。

 気になるのは、改正案が日割り支給だけでなく、支給目的や名称までも見直した点だ。

 現行の文通費は支給目的が「公の書類を発送し、公の性質を有する通信をなす等のため」と規定されている。

 ただ使途報告や残金の返還義務がないため、実際には支給目的にとどまらず「第2の歳費」として自由に使われてきた。

 そうした実態を踏まえて改正案は支給目的を「調査研究、広報、国民との交流、滞在などのため」に改めた。名称についても「調査研究広報滞在費」に変更。共産党を除く5党が賛成している。

 だが「国民との交流」のような曖昧な支給目的では使途が拡大解釈され、選挙活動などにも使われる懸念がある。

 議員にとって使い勝手の良いように支給目的を変えたような印象が拭えない。使途の適切性を確保するには、誰もが納得できる明確な基準を定めるべきだ。

 そもそも支給目的を広げるのなら、使途公開を義務付け、透明性を高めるのが筋だろう。

 使途を公開すると使い勝手が悪くなるとして自民党を中心に根強い消極論があるというが、文通費の財源が国民の血税であることを忘れてもらっては困る。

 法改正を巡る協議では賛否が分かれている使途公開の義務化や、未使用部分の国庫返納についての議論は後回しになった。与野党は今国会中に結論を得る考えで一致しているという。

 国民は高い関心を持ってこの問題を注視している。国会はそのことを肝に銘じ、制度改革を早急に実現してもらいたい。