「スシ」や「マンガ」「ニンジャ」など、海外でも通じるようになった日本語は多い。「ヒバクシャ」もそうだ。広島や長崎の原爆被害者を指す「被爆者」という日本語は海外でも広く知られ、国際的な平和会議などでも通用する国際語になった
▼70を超える国や地域が批准した核兵器禁止条約も「ヒバクシャ」を使用する。もう二度と核兵器の犠牲者を出してはならない-。世界の多くの人々が「ノーモア・ヒバクシャ」の願いを共有するようになった
▼「ヒバクシャ」が国際語の地位を得られたのは、核兵器廃絶を願う人々の努力と祈りが積み重なった結果だろう。被爆者自身が心身の痛みを引きずりながら訴えを続けてきた。ことしのノーベル平和賞に日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が選ばれた。被爆者らの祈りが、また一つ形になった
▼現実の世界では核廃絶の願いに強い逆風が吹いている。核の使用をちらつかせて国際社会を威嚇する指導者がいる。核保有国は大量破壊兵器を挟んでにらみ合い、身動きできないでいる。唯一の戦争被爆国である日本も米国の「核の傘」に依存し、核兵器禁止条約には参加していない
▼広島と長崎への原爆投下から79年。被爆者の平均年齢は今年3月末時点で85・58歳だ。本県の原爆被害者の会も2020年度末で活動を停止した。ただ、被爆者らの連絡窓口としての機能は残している
▼今回の受賞を機に、改めて「ノーモア・ヒバクシャ」の歩みを前に進めねば。世界に核兵器はいらない。
